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HOME お知らせ synapse6月号 「量から質へ」の転換が突きつけるもの~住生活基本計画が変える賃貸経営の次の一歩~

synapse6月号 「量から質へ」の転換が突きつけるもの~住生活基本計画が変える賃貸経営の次の一歩~

令和8年3月27日、「住生活基本法」に基づく新たな住生活基本計画(全国計画)が閣議決定されました。本計画は、概ね5年ごとに見直されてきた住宅政策の根幹であり、今回は、令和8年度から令和17年度までの10年間を見据えた方向性が示されています。

 

今回の最大のポイントは、住宅政策が「量の確保」から「質の向上」へと大きく転換された点です。かつての日本では住宅不足を背景に「いかに供給するか」が重視されてきましたが、人口減少や世帯構造の変化、住宅ストックの蓄積が進んだ現在では、「いかに活用し、価値を維持するか」が求められています。この流れは、賃貸経営にも極めて大きな意味を持ちます。

 

■ストック時代への転換と「負動産」リスク

まず重要なのが、「既存ストック活用」が政策の中核に据えられたことです。空き家や既存住宅の流通促進、リフォームや適切な維持管理の強化、相続住宅の活用など、「保有資産をどう活かすか」が明確なテーマとなっています。

裏を返せば、適切に活用されない不動産は市場から取り残され、空き家や空き地として残るリスクが高まるということです。これまでの「建てれば決まる」という前提は通用しにくくなり、管理が行き届かない物件は「負動産」となる可能性が高まるのです。一方で、適切な改修やバリューアップにより「選ばれる理由」をもつ物件は、競争優位を確立できるチャンスでもあります。

 

■「誰に貸すか」が問われる時代へ

次に、「誰に貸すか」という視点の重要性が高まっています。高齢単身世帯の増加や子育て世帯のニーズ変化、住宅確保要配慮者への対応など、従来の入居者像は大きく変化しています。今後は、不動産・福祉・行政が連携しながら多様なニーズに応えていくことが求められます。例えば、高齢者を敬遠するのではなく見守りサービスや保証制度と組み合わせて受け入れる、子育て世帯向けに間取りや設備を工夫するなどのターゲット設計が重要になります。人口減少が進む中で、従来と同じ賃貸経営が成り立つ保証はなく、差別化が問われてくるのです。

 

■資産としての「住宅ストック」の再定義

さらに、「住宅ストックの循環」という考え方も重要です。既存住宅を適切に評価し、次世代へ引き継ぐ流れの中で、維持管理や改修の履歴が資産価値に直結するようになります。賃貸経営は単なる運用ではなく、資産マネジメントとしての性格を強めていくでしょう。

 

■担い手不足とデジタル化が迫る経営変革

また、人手不足の進行に伴い、管理の効率化とデジタル化への対応も避けて通れません。情報の可視化や管理体制の高度化が求められる中で、オーナー自身による自主管理だけでは対応が難しい場面も増えていくと考えられます。

 

以上を踏まえると、今後の賃貸経営の方向性は明確です。「ストックの質を高めること」「誰に選ばれる物件にするかを考えること」「資産として循環させること」そしてそれらを支える適切な管理と情報の可視化が不可欠になります。

 

今回の住生活基本計画は政策文書というだけでなく、選ばれる不動産と選ばれない不動産の分岐点を示しています。市場と政策の変化を踏まえ、主体的に価値を創出していく姿勢が、これからの経営を左右するといえるでしょう。